信濃川の土手がちらほら雪解けの間に見えるときがまいりましたので、仲良しのお友達をさそって、お別れの摘み草をいたしました。よく晴れた朝、めいめい、紫のお高祖頭巾を被り、裾をからげて、派手な長襦袢をのぞかせながら、手に手に小籠と竹べらをもって出かけました。駆けまわりながら、さざめきあい、積んだ若草の種類を誇りあいつつ、川堤を色どる乙女の群は、おちこちの遠い山々を背景に、優雅な絵にも似た眺めであったろうと思います。思えば、これが、長岡で過ごした若い日の最後の楽しい思い出になってしまいました。
「武士の娘」-初旅の章より
この碑は杉本鉞子(えつこ)を敬愛する多くの人々と河川整備基金の女性及び建設省信濃川工事事務所の協力を得て建設したものである。
平成7年4月「武士の娘」研究会